konaxyzのブログ

本のおすすめなどをしていきたいです(仮)

『灰色のダイエットコカコーラ 』佐藤友哉著(講談社)を読んだ

とてもよかった。

佐藤友哉の小説はわりかし最近になって読み始め、いろいろ漁っているうちにこれに辿り着いた。

なので実際たいしてコアなファンでもないのだけども、やっぱりすごく特異な作家、というより特異な存在であるように思えたので一定の興味を持っている。

そういうわけなので、作品自体はもちろんとても楽しめたわけだけれど、個人的にはどちらかと言うと著者自身に対する興味のほうが優っている感じだ。

とはいえ作品の方だってすごくおもしろかった。いつものごとく自意識の強い主人公の周りで、どうにも現実感のないキャラクター達が生きたり死んだりするというか、そういった展開で、一言でいえばいびつなボーイミーツガールというか、いびつな青春小説というかそんな感じで、ぼくにとってはすごく刺激的なもの。

そうしたこととは別に著者自身の人となりというか、あとがきなどから透けて見える著者の人格に対する興味がある、というのがぼくのこの著者に対するスタンスだ。

というところでこの本の紹介は一旦終わり、あとは雑談でも書きたい。

ルサンチマンは乗り越えられるべき、そして基本的にすべての人間に社会性が獲得されるべき、ということが当然ではないと思えてしまった時に、人生は少し厳しくなるように思う。それを苦労して乗り越える、というのが通常のルートで、その経過自体がひとつのストーリーとなって与えられ、それによって人は次のステップへと進める。しかしそれでは、そのこと自体が封じられた人間はどうなるだろう?まるで一つしかドアのない部屋の、そのドアを使わずになんとか部屋を出ようとするように、ぐるぐると狭い範囲を歩きまわることしかできないのだろうか?せめて壁に穴を開けることができればよいのだけれど、それには長い時間がかかりそうだ。そうしているうちにどんどん年老いていき、新たなルサンチマンが溜まっていく。この状況を打破する方法はどこにあるだろうか?とりあえず、部屋などなく、壁などなかったかのように振る舞うことは、人によってはできるとは思うが。