konaxyzのブログ

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『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』岩崎夏海著(ダイヤモンド社)を読んだ

期待以上におもしろかった。

展開やキャラクターの配置など、極めて綿密に計画されているのがわかる。

エンターテイメントとしての小説の王道展開をベースにしながら、その中でちゃんとドラッカーの内容が絡められていく。きちんとした細かいプロットが存在している感じ。

個人的には、序盤の部分が一番楽しめた。マネジメントの考え方が浸透していない組織に対して、どのようにして最初の一太刀をキメるかという展開のスリリングさ。

そういえば著者は以前、ニコ生で東浩紀と一緒に「芥川賞を計算で取るには」みたいな番組をやっていたなあ、というのを思い出す。

その番組はちょっと当初の予定とは違った方向に流れていってしまった感じだったけど、要はそういう発想というか信念みたいなのを持っている人なのだろう。賛否はあるだろうけど、個人的には共感する。

現段階のぼくの理解でいうと、作品自体に内在する価値とは別にその作品を人がどう評価するかというのがあり、後者の方をコントロールするにはどうすればよいか、というのがエンターテイメントとしての価値の高め方という話じゃないかと思う。

要はそこにマーケティング的な方法論が介在する余地があるよ、と。それがたぶんハリウッドのやってきたことであり、エンターテイメント小説のやってきたことなのだろう。

一方で前者が関係するのはたぶん歴史的・文化的な話で、こっちのほうがコントロールは難しいだろう。当該ジャンルの作品史のようなものを見据えたうえで、どのように作品を編み上げるかというような話。もしかすると、多くの人が評価するかどうかということと若干ズレてくる可能性もあり、言語化が難しいはず。

余計な考察をしてしまったけれど、とにかく楽しめる本だった。