konaxyzのブログ

本のおすすめなどをしていきたいです(仮)

『寺山修司の青春俳句』酒井弘司著(津軽書房)を読んだ

前エントリと同じく、寺山修司の俳句の解説本。

こちらも著者は俳人らしいけど、前エントリの本に比べて記述はドライで客観的であるような印象を受けた。

修司の全句から100句を選別し、それぞれを時代別(といっても中学、高校の1学年ごとだったりするが)に章立てして解説を付している。1つずつの解説が比較的簡潔にまとまっており、俳句の解説としても参考になりそうでよい。

例によって他の句や短歌、詩などが引用されている。それらを見るにつけても、修司にとって俳句とは(短歌、詩、戯曲なども同様)表現するための一形式に過ぎなかったのだろうという感覚がする。ぼくの印象では、修司個人の世界観が強すぎて、個々のジャンルの持つ形式の枠内に収まらないという感じ。

一方で、修司の俳句や短歌を語る上で見逃せない「盗作」問題もある。個人的な正当か不当かの判断は保留するけど、そうした(自分自身の作品にとどまらない)引用を重ねるほどに作者自身は空虚な存在となる。

強烈な自己、一方で空虚な自己。その二つの間にある逆説的な作者、というのがぼくの個人的な寺山修司像である。